<求められるのは積極的な住民参加>
行政主導の大型プロジェクトが散見される両地区であるが、住民参加となると今ひとつ盛り上がりに欠ける感が否めない。市民参加型のイベントは各種催されているものの、市や商工会議所とタイアップした官製イベントが多いためか、ややマンネリ化しているのが現状だ。一部の若手経営者らが活発な活動を見せているものの、周囲を巻き込むまでには至っておらず、若松の地で飲食店を開業予定の男性は「イベントに参加して店の告知をしたくても、そのような場がない」と肩を落としていた。
もっとも、盛り上がりへの機運は至るところに見受けられる。若戸大橋の50周年、北九州市の市政50周年を機に、北九州では全市的にイベントラッシュの時期に差しかかっている。「JC全国大会」や「B-1グランプリ」といった全国規模の大会を間近に控えるだけでなく、先日の若戸大橋50周年イベントや新若戸道路(橋に隣接開通したトンネル)の開通イベントに参加した多くの住民から、まちの盛り上がりに期待する潜在的な欲求が感じられた。考えてみれば、若松・戸畑の両区で人口14万4,000人を抱え、間近に隣接する小倉北区と八幡東区だけを加えてみても、これに25万2,000人が加算される。高齢化や凋落を嘆くより、多様な需要が眠る40万人近い人口密集地と考えた方が遥かに生産的ではないだろうか。
すでに小倉地区や黒崎地区では、起業志望の若者を集めて潜在需要の掘り起こしを進めており、地元経営者がこれを支援する動きも見られている。行政による大型の財政出動は未来永劫に期待できるものではないため、真に地元経済を活性化させるためには、中小企業や起業家の動きが欠かせない。行政に余力と意欲があり、大型イベントが矢継ぎ早にめぐってくる今の時期を最大のチャンスと捉えるべきだろう。
若戸大橋開通50周年を祝う記念イベントには、地元出身の有名人が集い、『明日に架ける橋』を皆で合唱した。大企業に牽引されて発展した都市だけに、発想の転換は容易ではないかもしれないが、地域の底から湧き上がる都市再生のうねりにこそ期待したい。そして、それこそが「明日に架ける橋」にほかならない。
≪ (中) |
※記事へのご意見はこちら